グローバルレポート|観光業は新たな不確実性に直面しているが、2022年初旬は堅調な滑り出しだった。

UNWTO 2022年3月25日

海外旅行は2022年引き続き回復基調で、2021年のスタートよりもはるかに良い状況となっている。しかしロシアのウクライナ侵攻は、いまだにコロナ関連の旅行規制があるなか、さらに経済の不確実性に圧力を加えている。全体として旅行への信頼度が影響を受け、ツーリズム回復へのプレッシャーとなっている。

  • 最近のデータによると、世界の海外旅行者到着数は2022年1月、前年の2倍以上の+130%、1ヶ月で1800万以上の到着となり、これは2021年全体の増加数に匹敵する。この数字は昨年より回復基調であった傾向を反映しているが、回復のスピードはオミクロン変異株の出現、いくつかの目的地での旅行規制の再適用の影響を受けた。2021年の71% の到着数減に引き続き、2022年1月はパンデミック以前の-67%となっている。
  • 全ての地域で2022年1月は堅調な回復を示している。ヨーロッパ(+199%),アメリカ(+97%)が最も高いが、海外旅行者到着数はいまだにパンデミック以前の半分に留まっている。中東(+89%),アフリカ(+51%)は前年より成長しているが、パンデミック以前との比較では-63%,-69%。アジア太平洋地域は(+44%)だが2019年比では−93%。最も回復しているのは西ヨーロッパで2021年比で到着数は4倍。それでも2019年比で-58%。他ではカリブ海諸国(-38%)、地中海ヨーロッパ(-41%)、他セイシェル(-27%),ブルガリア、キュラソー(−20%)、エルサルバドル(-19%),セルビア、モルジブ(−13%)、ドミニカ共和国(-11%),アルバニア(-7%),アンドラ(−3%)ボスニア、ヘルツエゴビナ(+2%)とここはパンデミック以前よりも増加。主要目的地ではトルコ、メキシコがそれぞれ(-16%,-24%)となっている。
  • 回復の見通し:2020年、21年の大幅な減少ののち、海外旅行は2022年については徐々に回復を続けている。3月24日の時点で12の目的地はCOVID 19関連の制限は設けておらず、多くの目的地が制限緩和、もしくは廃止に動いている。ウクライナの戦争は世界の経済環境、旅行の信頼回復にとって大きな脅威となっている。特にヨーロッパ旅行については影響が大きい。ウクライナ、ロシアの領空の閉鎖、多くのヨーロッパ諸国によるロシア航空会社の禁止はヨーロッパ内部の旅行に影響をあたえている。またヨーロッパ、東アジアへの航路も遠回りとなり、長いフライト時間、コスト高に繋がっている。ロシア、ウクライナの2020年の海外旅行消費は全体の3%を占め、紛争が長引く事で少なくともUSD140億の旅行消費が失われることになる。パンデミックの期間、モルジブ、セイシェル、スリランカなどはロシアマーケットが大きなシェアをしめていた。目的地としてロシア、ウクライナはヨーロッパの海外旅行者到着の4%を占めていたが、2020年のヨーロッパの海外旅行消費は1%にすぎなかった。
  • 経済の不確実性と圧力 影響を評価するのは今は早すぎるが、旅行調査、予約状況をみると侵攻後の1週間は鈍化したものの、3月初旬には回復を見せている。この攻撃は既に困難な経済状況にさらなる圧力を加え、消費者の自信に水を刺し、投資に不透明感を与える。OECDは世界経済成長率は昨年と比較し1%マイナスになると予測。一方でインフレはさらに2.5%上昇すると見込む。原油価格の高騰、インフレ上昇は宿泊費、旅行費用をさらにあげ、ビジネス、消費者の購買力、貯蓄にさらなる圧力をかける。この予測はUNCTADの予測に沿うもので、2022年の世界の経済成長予測も3.6%から2.6%に引き下げられており、発展途上国にとってはさらなる試練となる。

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